『行動分析学研究』掲載論文抄録 Vol. 10
高齢者の行動分析:高齢者の生き方にスキナーを活かす
河合伊六 (福山平成大学)
本稿では、まず、スキナー自身の生き方と彼が高齢期をエンジョイする方法
として提案した内容について紹介し考察する。彼自身も加齢に伴う心身の老化
を体験していたようであり、晩年にはかなり重篤な疾病に罹っていた。しかし、
余命もわずかであることを告げられたときにも、死や疾病の不安・恐怖を克服
することよりも、不必要な不安・恐怖を持たないでいることを強化し維持する
方策の方に関心を向けていたようである。彼はまさに「老いの生き方」の素晴
らしいモデルであると云うことができよう。本稿の後半では、高齢者の行動分
析的アプローチの現状について述べたのち、いくつかの実践事例を紹介し考察
する。この種の研究はまだ緒についたばかりであり、今後の研究が望まれる多
くの課題が残されている。今後に期待したい。
Keywords: 老いの自覚、不安・恐怖の克服、問題行動の変容、老いを楽しむ
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言行不一致の行動分析
桑田 繁 (作陽音楽大学)
社会科学の質問紙調査でしばしば報告される態度と実際の行動との相違を、
行動分析的な観点から言行不一致ととらえて論議した。従来の行動分析研究か
らは、言語行動が強化される一方で、その内容とは一致しない非言語行動が強
化されると言行不一致が生じ、強化随伴性にもとづく操作によって制御可能な
ことが示されている。この知見から、個体内部の態度は質問紙によって測定で
き、態度は行動として現われるとする従来の基本的な仮定に対して疑問を呈し
た。単一被験体法を用いて外的環境と個体行動との機能分析を押し進める行動
分析が、今後の社会科学研究や社会問題の解決に貢献し得る可能性が示唆され
た。次に、行動分析の多様な研究内容の発展と比較して、誤解や曲解のために
その普及が遅れている点について論議した。その理由として、行動分析家によ
る極端な環境主義的主張の継承や普及行動の欠如が考えられた。行動分析の活
用と同時に、学会による組織的な普及活動が21世紀に向けて期待される。
Keywords: 言行不一致、言語行動、質問紙調査、社会科学、単一被験体法、社会
行動、行動分析、普及
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行動的テクノロジーの普及に関する研究と実践の提言
島宗 理 (鳴門教育大学)
どんなテクノロジーでもそれが活用されるためには、まず採用されなければな
らない。スキナーは行動分析学の基本的枠組みと、それを社会問題の解決に役
立てるための指針を示した。これを21世紀に活かすためには、テクノロジー普
及に関する研究と実践が欠かせない。本論文では普及に成功した行動的プログ
ラムの例と失敗した例を分析し、普及に関する実験的・理論的研究と、さらな
る実践についての提言を行う。
Keywords: 普及、応用行動分析学、実験的行動分析学、システム分析
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Comments on the Dissemination of Behavioral Technology
Richard W. Malott (Western Michigan University)
I agree with essentially all Shimamune (1996) has said concerning the
dissemination of behavioral technology. Furthermore, l think his
observations are insightful and nontrivial;
and the implementation of his proposal could do much to further the
impact of B. F. Skinner in the 21st century. In this commentary, I
will simply supplement what he has said, much in the same spirit of
what he has said.
Keywords: dissemination, applied behavior analysis, experimental
analysis of behavior, systems analysis
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物、事、振る舞い −情報の扱いに関するSkinnerの知恵−
久保田 新 (藤田保健衛生大学)
本試論は、随伴性により形成された行動とルールにより統制される行動の関係
に関わる形で、一片の情報が「物」と「振る舞い」によって構成されること、
また、その構造がその情報にアクセスする他の振る舞いを通じて階層的、ない
し再帰的になると仮定することが可能か否かを問う。現代の、文明化されコン
ピュータ化された人間社会では、大量の情報が、もともとの、そして変化し続
ける随伴性から切り離されて<物化>する、即ち、情報のダイナミックな構造
が柔軟性を欠いて固着する傾向にある。柔軟な情報へのアクセスが実現できる
よう随伴性をよりよくアレンジするためには、もともと情報の持っていたダイ
ナミクス、つまり、もともとの随伴性を、最低限シミュレーション的な環境に
おいて再活性化することが重要である。そのために、試論では、三項随伴性が、
一見階層的に見え変化し続ける環境とその中で行動を発し結果を受け取る自己
との関係を充分に説明できるかをも問うべきだと論じる。同様の再考が、ルー
ルの理解が含まれる現実的な研究・教育システムなどの他の分野でも、従って、
理論的な行動分析そのものにおいても要求されていると考える。
Keywords: 行動分析、随伴性により形成された行動、ルールにより統制される
行動、情報、失われたギャング・エイジ、変化し続ける随伴性、言語共同体、
シミュレーション
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発達障害生徒における写真力一ドを用いた家庭生活スキルの形成
一親指導プログラムの検討−
青木美和 (横浜国際福祉専門学校)
山本淳一 (明星大学)
14名の発達障害生徒が、家庭生活スキル(学校の持ち物の準備、登校前の身
じたく、帰宅後の手洗い・うがい、家庭学習)を写真カードを用いて自発的に
遂行できることを目的とした。研究は全て対象生徒の家庭で実施された。対象
生徒が写真カード冊子を1枚ずつめくりながら、行動連鎖を遂行してゆくこと
が標的とされた。ベースライン期において4名の対象生徒とも、家庭生活スキ
ルの自発的反応の生起率は安定しなかった。家庭介入期において母親に写真カー
ドの呈示方法と、一定時間経過後に適切な反応が出現しなかったら言語指示・
身体的介助を与えることなどを教示し、それを家庭で毎日実施してもらった。
その結果、家庭介入期において家庭生活スキルの自発的反応の生起率が上昇し
た。また、これらの介入では効果がみられなかった生徒には、写真カードや強
化刺激の変更といった操作を行うことによって自発的反応が安定して生起する
ようになった。これらの結果について、家庭生活スキルの形成に及ぼす視覚的
プロンプトと親指導の効果の点から考察した。
Kyewords: 写真カード、家庭生活スキル、家庭介入、親指導、発達障害生徒
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スケジュール履歴効果の刺激性制御
一教示と弁別性スケジュール制御の影響−
大河内浩人 (大阪教育大学)
17名の大学生を、最少教示−標準FI群、最少教示一修正FI群、正教示一標準FI
群、正教示一修正FI群の4群のいずれかにランダムにムりわけ、多元定比率低
反応率分化強化(mult FR DRL)スケジュールの後に多元定間隔定間隔強化
(mult FI FI)スケジュールを行った。最少教示条件の被験者には反応率に関
する教示をしなかった。正教示条件の被験者には、FR成分のときにすばやく反
応する、DRL成分のときに間隔をあけて反応するように教示した。標準FI条件
の被験者には、mult FI FIで、一定量の強化子を与えたのに対し、修正FI条件
の被験者には、インタバル中に自発された反応数に応じて強化量を変えた。
mult FR DRLでは、全被験者がFR成分で高率、DRL成分で低率の反応を示した。
最少教示−標準FI群の4名中3名のmult FI FIでは、かつてFRスケジュールと
相関のあった刺激下での反応率がDRLと相関のあった刺激下でのそれよりも高
かった。このような履歴効果の刺激性制御は、最少教示条件より正教示条件で
顕著だった。教示の効果は、反応量と強化量の相関の影響を受けなかった。教
示性制御に影響すると考えられる変数について論じた。
Keywords: スケジュール歴、刺激性制御、教示、多元スケジュール、反応量と
強化量の相関手続き、パネル接触、人間
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並立連鎖スケジュールにおける分割比率がハトの選択率に与える効果
米山直樹 (立命館大学)
4羽のハトを用いて、並立連鎖スケジュール下での2種の分割選択肢間の選
択行動を調べた。第1リンクでは2つの独立した変動比率60秒、切り替え遅延
2秒のスケジュールを適用し、第2リンクでは左右の選択肢をそれぞれ30秒に
固定して、一方の選択肢には連鎖固定間隔15秒固定間隔15秒のスケジュールを
配し(固定分割選択肢)、もう一方の選択肢には連鎖固定間隔X秒固定間隔Y
秒のスケジュールを配した(変動分割選択肢)。このうち変動分割選択肢にお
ける分割比率であるX:Yの比率は1:5、1:2、1:1、2:1、そして5:1と5段階に変
化させた。実験の結果、変動分割選択肢に対する選択率は、Xの比率の増加に
つれて最初から半ばまでは減少し、半ば以降は逆に増加するというV字型の変
化が3羽の被験体において示された。ただし残る1羽には最初の減少は見られ
ず、半ば以降の増加のみが認められた。以上の結果は、Xの比率が減少した際
の変動分割選択肢への選択率の増大が1番目のコンボーネントの刺激の嫌悪性
によって説明され、Xの比率が増大した際の変動分割選択肢への選択率の増大
は2番目のコンポーネントの刺激の条件性強化力によって説明されることを示
唆している。
Keywords: 並立連鎖スケジュール、選好、分割比率、嫌悪性、キイつつき反応、
ハト
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発達障害幼児の親指導プログラムに関する検討
一児童相談所におけるプログラムの実施一
菅野千晶 (牛久市役所福祉部社会福祉課)
小林重雄 (筑波大学心身障害学系)
本研究は、児童相談所において、発達障害児を子どもにもつ母親23名を対象
に、行動分析的知識と指導技法の獲得のための親指導パッケージプログラムを
実施した。本研究で使用された親指導パッケージ・プログラムは、以下の5つ
の要素で構成されていた。すなわち、(1) テキストの使用、(2) 講義、(3) グ
ループ討論、(4) 家庭での子どもの指導の実施とその記録、(5) 記録に対する
フィードバックとアドバイスであった。本研究の結果より、母親の親指導パッ
ケージ・プログラムに対する満足度が高かったことが示された。また、すべて
の母親のKBPACの得点が上昇したこと、子どもの行動変化に関する母親の評価
によるチェックリストにおいて、ほとんどの子どもの得点が上昇したことが示
めされた。さらに16カ月後に実施した追跡調査においても、その効果は維持し
ていた。しかしながら、プログラムへの参加とKBPACの得点上昇および子ども
の行動変化については、その関連性は明らかにできなかった。本研究の結果か
ら、公的療育機関における、行動分析に基づく親指導プログラムの有効性が示
唆された。
Keywords: 発達障害児、親指導、パッケージ・プログラム、KBPAC、児童相談
所
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